赤い服の女

時代は今から数十年前の旧家の染物屋。
　　この屋敷の主人は敷地内にいくつもの蔵を所有し、その各々の蔵の中に一人ずつ妾を囲っていた。妾たちは物心つく前から蔵の中で育ったので、元来「外に出たい」という概念がない。
　　ハル(ローバー美々)もそのうちのひとりだった。ハルは蔵の中で染物の仕事をし、使用人に世話をされ、光男が訪れれば寝間の愛玩となった。
　　そのハルの蔵へ新しく若い青年の使用人が配属された。
　　使用人の幹生はハルの世話をするうちに、まるで風に揺れる布が己を誘っているかのようにハルに惹かれていくのだった。